DMの既往を持つ63歳女性が向こう脛、会陰部、顔面に潰瘍を形成する皮疹、口唇炎、舌炎で受診した。症状は4年ほど続いており、局所的な治療が色々試されたが良くならなかった。彼女は同時に最近食思不振と体重減少、軽度の腹痛を感じている。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm0810147

診断は?





















「グルカゴノーマに伴う壊死性遊走性紅斑」

・ 腹部CTで膵尾部に7cm大の腫瘤と血中グルカゴン上昇を認め、手術で病理学的にもグルカゴノーマと診断された。皮疹はグルカゴノーマに伴う壊死性遊走性紅斑Necrolytic Migratory Erythema:NME)と考えられた。

壊死性遊走性紅斑は環状で、辺縁不整、中心が痂皮・水疱形成するのが特徴でグルカゴノーマの70%に認める。会陰や擦れる場所にできやすいが、体幹や下肢、口唇周囲にもできやすい。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1915564

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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1603135

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4140234/

・NMEの形成にはグルカゴンが関係している。ソマトスタチンアナログの使用や腫瘍の摘出で皮疹は軽快する。ビタミンB欠乏などの栄養障害も関係するかもしれない。鑑別疾患にはペラグラ、乾癬、脂漏性皮膚炎、湿疹、天疱瘡など。

・グルカゴノーマの症状には糖尿病、貧血、血栓傾向、体重減少、下痢、精神症状がある。

皮疹は難しいですが、一発診断につながるので勉強が必要ですね。