HIV急性感染は急性レトロウイルス症候群(acute retroviral syndrome:以下ARS)といい、感染より潜伏期間2-4週間で発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹、筋痛、関節痛などで発症し、2-4週間継続するのが特徴でHIV患者の約5-9割で発症すると言われています。

ARSは伝染性単核球症様の症状をきたし感冒Mimickerとなりえます。では症状でARSは疑えるのでしょうか?各症状の尤度比は以下のとおりです。

スクリーンショット 2019-07-18 10.20.43 AM
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/1887766

各症状の陰性尤度比はどれも1前後で否定には使いにくいことがわかります。また嘔吐、下痢などの消化器症状も来すんですね。陰部潰瘍、鵞口瘡は比較的特異的です。

というわけでなかなか難しいですが、私がARSを疑うタイミングは以下のとおりです。
 
伝染性単核球症様症状でEBVもCMVも陰性
症状が長期間(2-4週)続く
リスクがある患者(これについては無いからといって否定はできない):MSM(Men who have sex with men)、静注薬物使用者、性風俗産業の従事者、不特定多数との性交渉歴
陰部潰瘍、鵞口瘡を認める
過去にHIVに関連する既往歴がある:ウイルス性肝炎、梅毒、帯状疱疹、繰り返すヘルペス感染症、肛門周囲膿瘍、口腔食道カンジダ etc

周囲への感染やAIDSの発症予防にARSの時点で診断するのは大切ですね。