63歳女性が3ヶ月で徐々に悪化する両下肢の振戦を主訴に受診した。振戦は右足に強く安静時にはないが、立ったり歩いたりすると悪化した。頭部にも軽度の振戦を認めた。頭痛、しびれ、意識障害、麻痺などは認めなかった。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27816447

彼女は60pack-yearの喫煙歴があった。 診察上も姿勢時振戦を認めたが、それ以外の異常所見は無かった。彼女は本態性振戦と診断され、β-blockerで治療された。しかし1ヶ月立っても改善せず薬をガバペンチンなどに変更されたが改善は見られなかった。頭部MRIでは異常を認めなかった。

半年後に紹介されたときには振戦に加えて、構音障害と垂直性複視も認めていた。振戦は運動で増強し目標に近づくに従って増強した。眼球運動はsaccadicであった。頭部造影MRIが取られたが特記すべき所見は無かった。

診断は? 





















「小細胞癌に伴うParaneoplastic syndrome」

・患者の問題部位としては右小脳が疑われる。「画像で異常がないSubacuteな小脳障害の鑑別」腫瘍随伴、抗GAD抗体/抗グリアジン抗体関連、toxic、橋本脳症、遺伝性などがある。

・小脳障害に関連する悪性腫瘍は小細胞癌、神経芽細胞腫、卵巣がん、精巣がん、乳がん、ホジキンリンパ腫、胸腺腫などがある。 

・本症例では腫瘍随伴症候群を疑い、IvIg 2g/dayを開始した。FDG-PETで右肺腫瘍と縦隔・右肺尖部リンパ節腫脹を認めた。
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・ リンパ節生検で小細胞癌が証明され、小細胞癌に伴う腫瘍随伴症候群と診断した。また抗Zic4抗体と抗GAD65抗体が陽性であった。

・腫瘍随伴の神経障害には小脳失調以外に辺縁系脳炎、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、脳幹脳炎、錐体外路症状、脊髄炎、多発神経炎、MG、LES、Stiff-man syndrome、Neuromyotoniaなどある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12849427

小脳に形態異常がないときの小脳失調の鑑別の勉強になりますね。小脳失調を起こす薬剤にはフェニトイン(アレビアチン®)、バルプロ酸、メトロニダゾール、リチウム、アミオダロン、カルバマゼピン、シスプラチンなどがあります。アルコールもですかね。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25391707

振戦についてどう鑑別するかはこちらを参照ください。 企図振戦と動的振戦はきちんと鑑別しなければいけないですね。