今日なに読もう〜病院総合医の論文ブログ〜

京都の上さまの元で病院総合医をやっています。バランスの取れた一流の病院総合医目指して修行中!論文メインに挙げていきます。

2019年09月

免疫再構築症候群とInfliximabの関係

RAの治療でバイオを使う時に怖いものの1つが潜在性結核の再活性化です(約10倍)。バイオの1つであるTMF-α阻害薬はマクロファージの活性を抑え、貪食により抗酸菌を隔離する能力を下げます。他のバイオと比較してもTNF-α阻害薬は潜在性結核の再活性化の割合が高いとされています(Adjusted HR 4.31)。

TNF-α阻害薬の中でもInfliximabはTNF-αだけでなく、T cellの活性化を抑制しINF-γの発現を低下させます。そのため同じTNF-α阻害薬のエタネルセプトと比較しても潜在性結核の再活性化のリスクが高いかもしれないとされています。

https://academic.oup.com/cid/article-pdf/39/8/1254/5906667/39-8-1254.pdf

下の図はReal worldのデータで他の因子を調節したAdjusted HRはInfliximabとエタネルセプトで有意に差が出ました(HR 4.34)。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30561745

再活性化した場合、多くはInfliximabを中止し抗結核薬を開始するのではないかと思いますが、その際にIRIS(immune reconstitution inflammatory syndrome:免疫再構築症候群)が起こりやすい?という話。AIDSとTb両者の治療する時が多いみたいですが、non-HIVのTb治療だけでも報告はあります。結核性リンパ節炎109名の報告では23%に見られ、中央値 46日後に出現、中央値67.5日続いたようです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15825042

ちなみにIRISはUnmasking IRISParadoxical IRISに分かれます。元々顕在化されていなかった疾患が治療後に顕在化するのがUnmasking IRISで、元々の疾患が再発、悪化するのがParadoxical IRISです。結核治療後にはリポアラビノマンナンと言った抗原への暴露が増え、TNFが誘発されサイトカインカスケードが活性化されることがIRISを引き起こします。

そしてInfliximabとIRISの関係ですが、抗酸菌IRISの場合CD4+ T cellによるTNFとINF-γの産生が上がっておりIRISの機序に関係していると言われています。ですのでPSLが効かない抗酸菌IRISにInfliximabを使用したという報告があるくらいです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26394669

Infilximabを使用していた284名中6名で粟粒結核を発症し、そのうち4名でIRISを認めた(だいたい1〜2ヶ月後に)報告もありました。つまり結核の治療による抗原への暴露の増加とInfliximabの中断による免疫再構築がIRISを引き起こす可能性があるということですね。Infliximabの効果は中止後もだいたい3-4週続くようです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15714425

IRISの出るタイミングは2-3ヶ月後が多いですが、数日後に出た症例もあるそうです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19956004

免疫系は複雑に絡み合いますね。勉強になりました。

バルプロ酸の副作用は

抗てんかん薬の副作用は色々ありますがバルプロ酸(デパケン®)について。てんかんだけではなく片頭痛の予防やmood-stabilizing agentとして入っている患者さんも多いですね。

いくつ言えますか?
 
kusuri_ippouka
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12475192

・鎮静効果、倦怠感
・Overdoseで脳浮腫:48-72時間後に起こる。高アンモニア血症によるとの説も。中毒濃度域では透析可能。
・Overdoseで血圧低下
・低ナトリウム血症

・低血糖:カルニチン低下による
・高アンモニア血症:尿素サイクル阻害やカルニチン低下による
・振戦:姿勢時振戦が多いが安静時にも出る。20-25%に認める。
・骨粗鬆症
・膵炎 
・血小板減少 
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) 
・体重増加
・二次性Fanconi症候群


ちなみにバルプロ酸はカルバペネム系と併用禁忌です。消化管のアシルペプチドヒドロラーゼを阻害することにより代謝されたバルプロ酸の再吸収を抑制し血中濃度を低下させるためです。これを利用してバルプロ酸中毒の際にメロペネムを使用して血中濃度を下げた報告がありました。

https://www.ajemjournal.com/article/S0735-6757(19)30575-3/fulltext 

24歳男性 下腿の皮膚びらん、紫斑

生来健康の24歳男性が下肢のびらんが悪化したと救急外来を受診した。この5日前に発熱、頭痛、咽頭痛、咳で近医を受診しウイルス性咽頭炎として対処療法されていた(A群β溶連菌迅速検査は陰性). 2日前より両下肢に皮疹が出現し臀部に広がってきた。かゆみや痛みはなく、海水や淡水への暴露は無かった。

バイタルに問題なく、口腔内に潰瘍や発赤は認めなかった。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25874067

診断は?





















「マイコプラズマ感染に伴う白血球破砕性血管炎」

・血液培養陰性、肝炎ウイルス、HIVスクリーニング陰性、MPO/PR3-ANCA陰性であった。
・皮膚生検で表皮の海綿状変化と表皮下水疱、膿疱があり小血管周囲に好中球が優位で好酸球をほとんど認めず、白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)の所見であった。マイコプラズマIgM 1327 (normal: 0.90-1.09)、IgG 2.20 (normal: 0.90-1.09)でマイコプラズマ感染に伴う白血球破砕性血管炎と診断した。
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・コルヒチン、ステロイドを使用し3日ほどで水疱は破れ皮疹は軽快傾向となった。
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・皮膚白血球破砕性血管炎は皮膚小血管性血管炎であり、Purpable purpuraを呈する事が多いが血管炎が生じる深さによって紅斑、潰瘍、水疱、蕁麻疹様など多彩なプレゼンテーションを取る。薬剤(ペニシリン系、セフェム系、NSAIDs)や感染(溶連菌、肝炎ウイルス、パルボウイルスなど)、癌関連(MDS、固形がん)、膠原病(ARV、IgA vasculitis)などの二次性を除外する必要がある。

・ マイコプラズマで肺炎をきたすのは3-10%であり、多くは頭痛・筋痛などと共に上気道症状を起こす。肺外症状で皮膚関連は25%程度に生じる。Erythema multiformeなどの紅斑から、Raynaud症状(寒冷凝集素症)、Stevens johnson syndrome様Fuch症候群(粘膜病変のみのSjS)、や粘膜炎を起こす。

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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1614484 

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https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2737057

・本症例のように二次性白血球破砕性血管炎を起こすこともあるが稀である。報告例を診ると糸球体腎炎、関節炎、脳炎、網膜血管炎、膵炎などの他の臓器障害を伴う事が多いようである

・肺外症状は他にも心血管系(心筋炎、心内/動脈血栓)や神経(Opsoclonus-myoclonus syndrome、脳炎、髄膜炎、小脳炎、脊髄炎、GBS)、血液(溶血性貧血、TTP)、難聴、中耳炎、結膜炎などが言われている。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26858701

EMとENの違いは

EM(Erythema Multiforme:多形紅斑)とEN(Erythema Nodosum:結節性紅斑)は一見ややこしいですよね。

EMの皮疹は境界明瞭な紅色/ピンク色の斑状皮疹で徐々に丘疹になります。皮疹部位では痒みや焼けるような感覚を呈することがあります。Target lesionを呈することもある。粘膜病変は少なく口腔に限局します。3-5週で軽快する。
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https://www.aafp.org/afp/2006/1201/p1883.html

EMの原因は感染や薬剤に対するHypersensitivity reactionと言われています。HSVが最多で50%以上を占めるとされています。マイコプラズマも原因になります。薬剤はNSAIDsやペニシリン系が有名ですが、原因は何でもありです。増悪してSjSになったりもします。
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ENは脂肪織炎なので見た目が全然違います。表面が目立たないですよね。こちらもⅣ型アレルギーと言われています。
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https://www.aafp.org/afp/2007/0301/p695.html

原因は特発性、A群β溶連菌、マイコプラズマ、サルコイドーシス、結核などをまず覚えておきましょう。
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30歳女性 舌の変化

30歳女性が数ヶ月前からの口臭と舌の変化、口腔乾燥を訴えて外来を受診した。彼女は6ヶ月前にHodgkin lymphomaの抗がん剤、放射線治療を終えているnon-smokerである。

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http://www.cmaj.ca/content/184/4/E241

診断は?





















「Fissured tongue(溝状舌)」 

・Fissured tongueと診断し、舌を定期的にブラシするよう薦めた。数カ月後口臭は軽減したが、舌の見た目は変わらなかった。口臭は放射線治療による口腔乾燥が原因と考えられ、Fissured tongueは偶発的に見つかったと考えられた。

・Fissured tongueはLingua plicatascrotal tongue(陰嚢舌)と呼ばれ、舌の側面や表面に深い溝ができる良性疾患である。高齢者にcommonであり、20%以上で見られるとされている。溝に食物が溜まったり細菌感染しない限り、特に治療は必要ではない。Down症候群や末端肥大症、Sjogren症候群、乾癬と関連するとされている。

Melkersson-Rosenthal syndromeは顔面神経麻痺、繰り返す口唇/顔面浮腫(血管性浮腫と違い長く続く)、fissured tongueを3徴とする原因不明の非乾酪性肉芽腫を来す疾患である。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Am+J+Otolaryngol.+2009%3B30(1)%3A33-37.
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nagano1123

関西で一流の病院総合医目指して修行中

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