47歳男性がSIADHによる低ナトリウム血症(Na 105)で入院した。点滴治療でDay2 111, Day 3 116, Day 4 131と改善した。低ナトリウム血症は改善したが、入院時の意識障害は改善せずDay 15に頭部MRIを撮影した。

MRIで大脳回の先端にT2とFLAIRで点状の高信号を認めた。
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また基底核にT2 highな信号を認めた。脳幹には異常を認めなかった。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28778716

診断は? 





















「 浸透圧性脱髄症候群(ODS)」

・低ナトリウム血症の病歴と画像上の特徴より浸透圧性脱髄症候群(
osmotic demyelination syndrome:ODS)と診断された。徐々に意識は改善したが、会話は難しいままだった。

・ODSの症状は四肢麻痺、痙攣、閉じ込め症候群、仮性球麻痺、意識障害などである。リスクにはNaの過剰補正以外に肝移植、血液透析、アルコールなどがある。画像所見は
白質と灰白質が近接している場所基底核/視床の対称性病変脳幹大脳/小脳の白質-灰白質の接合部)に影響しやすい。橋病変は有名で三叉状の病変(Trident sign)が特徴的だが、脳幹病変(30-50%)を認めない場合もある
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https://academic.oup.com/qjmed/article/113/2/131/5511824

またDWIでも皮質下に点状、層状の高信号、基底核に高信号を認める。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3486681/
 
・病理上はCortical type(皮質での層状壊死と星状細胞増加)とSubcortical type(脳回側の深部皮質と下にある灰白質の脱髄)に分かれる。Subcortical typeでは血流豊富な灰白質に挟まれた白質が浸透圧の影響を受けやすいと推測されている。
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