多発性骨髄腫の既往のある77歳男性が15日間で徐々に意識障害が進行したと救急を受診した。採血では血小板が25000であった。頭部CTでは骨破壊を伴わない多数の高吸収域を認めた。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23610149

診断は?















「intracranial extramedullary hematopoiesis(IEH)」

・病変が多数あり形態からは出血というより頭蓋内髄外造血(intracranial extramedullary hematopoiesis:IEH)が疑われた。血小板輸血など行ったが残念ながら2日後にお亡くなりになった。剖検で頭蓋内髄外造血が証明された。頭蓋内髄外造血は貧血やリンパ増殖性疾患でよく見られるが、多発性骨髄腫では稀である。頭蓋内髄外造血は痙攣、水頭症、認知機能障害を起こす

・髄外造血は骨髄増殖性疾患(骨髄線維症など)や貧血(特にサラセミア、鎌状赤血球症)で生じ、好発部位は肝臓・脾臓・胸部の傍脊柱管/肋骨腫大などである。腫瘤を形成する場合も柔らかい事が多い。造影効果やPETの集積は強い。

・肝臓・脾臓は肝脾腫の形を取るか、肝臓ではリンパ管(グリソン鞘)に沿った腫瘤のパターンも取る。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12388506

・胸部は胸部の傍脊柱管/肋骨腫大が典型的。下の写真はサラセミアの31歳男性の胸腔内髄外造血
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1303084

サラセミア患者の肋骨肥大
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https://academic.oup.com/qjmed/article/112/7/543/5284922

・脊柱管内にできて脊髄を圧迫することもある。下の写真は造影MRI TI強調像。骨髄周囲が多い。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14531481

・他に腎周囲や仙骨前面にもできる。下の写真は骨髄線維症の患者の腎周囲のrim様の髄外造血。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1700379

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12388506

骨髄線維症など骨髄不全のある患者でmassでは髄外造血も鑑別ですね。