44歳男性が30日前からの関節痛、20日前からの記憶障害で受診した。頭部MRIではT2で左海馬と右脳室周囲、側頭葉に高信号を認めた。

スクリーンショット 2019-11-23 14.48.45

スクリーンショット 2019-11-23 14.55.21

髄液検査では単核優位の白血球増加と蛋白増加を認めた。ウイルス性脳炎が疑われ、アシクロビルが開始された。入院中に以下の所見が認められた。
スクリーンショット 2019-11-23 14.53.17
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22051026

診断は?





















「再発性多発軟骨炎による脳炎」

・MRIでも両側耳介に異常高信号を認めていた。耳介軟骨の生検で炎症細胞の浸潤と軟骨の変性を認めた。再発性多発軟骨炎(Relapsing Polychondritis:RP)による脳炎と診断し、メチルプレドニゾロン200mg5日間点滴し、120mg/dayに減量した。
スクリーンショット 2019-11-23 14.54.17

・1週間後には症状は改善し、耳介の腫脹も無くなった。その後、PSL60mg+アザチオプリン100mgで退院した。
スクリーンショット 2019-11-23 15.06.02

・RPは50代に多い様々な軟骨(耳介、鼻、気管、心臓の弁、関節)に炎症を起こし、耳介腫脹・鞍鼻・気道狭窄・弁膜症・関節炎などを起こす疾患である。またプロテオグリカンが豊富に含まれる組織(眼球、心臓、血管、内耳、腎臓)にも炎症を起こす。
スクリーンショット 2019-11-23 15.32.56
https://www.cfp.ca/content/cfp/64/5/363.full.pdf

これは鞍鼻。
スクリーンショット 2019-11-23 15.24.46
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1713302

これは強膜炎をきたしたRP
スクリーンショット 2019-11-23 15.37.47
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1501692

・RPは髄膜脳炎を合併し様々な症状(認知機能障害、意識障害、記憶障害、痙攣、感覚障害など)をきたす。他の症状が見逃されることもあり診断は難しい。頭部MRIで耳介に異常信号を認めることがあるので注意である。脳生検がされることもある。