軽度の喘息と鼻ポリープのある30歳女性が胸痛で救急外来を受診した。心電図上ST上昇を認め、その後心停止となった。CPRと冠動脈造影が行われ、3枝とも狭窄が認められニトログリセリンの静注により改善した(下写真)。

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https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/article-abstract/2747600

彼女は冠攣縮性狭心症と診断され、ジルチアゼムとニトログリセリンが処方されICDが埋め込まれた。2ヶ月後に同様のエピソードで救急搬送された。心臓カテーテル検査では同様の狭窄像が見られ、ベラパミルとスタチンが追加された。

4ヶ月後、意識消失で救急搬送され搬送時CPAであった。CPRを10分行ったが心拍再開せず病歴よりニトログリセリンの静注を開始したところ、5分後に心拍再開した。硝酸イソソルビドに加えてアムロジピン、ジルチアゼム、ベンゾジアゼピンなどの治療をしても発作を繰り返し、彼女のEFは30%まで低下した。

次に行う一手は?





















「ステロイド治療」

・気管支喘息や鼻ポリープの既往を考えて、デキサメタゾン8mg1日3回の治療が開始された。ステロイド開始からは発作は起こらなくなった。デキサメタゾンは徐々に減量され、最終アミオダロン10mg、徐放性硝酸イソソルビド、ジルチアゼム、プレドニン5mgで退院した。その後は18ヶ月で発作は1回のみであり、EFも55%まで改善した。

・冠攣縮性狭心症の治療のメインは長時間作用型の硝酸薬Caチャネルブロッカーである。スタチンやクロニジン、Rhoキナーゼ阻害薬なども効果があるかもしれない。心停止などを起こした患者ではICD埋め込みが推奨されている。2015年のAHAのガイドラインではコカインによる冠攣縮でのCPAの治療にニトログリセリンを使うことが推奨されているが、VSAでは推奨されてはいない。しかしケースレポートでは使用成功例はいくつかある。

・難治性冠攣縮性狭心症がステロイドで治療されたのは8例あり、そのうち7例は気管支喘息、1例は好酸球上昇が認められた。Kounis症候群は当初重症アナフィラキシーに伴う心筋梗塞(攣縮、血栓どちらもあり)とされていたが、現在では薬剤、環境暴露、食事(アニサキス)、冠動脈ステントなどへのhypersensitivity coronary disorderへと広げられている。今回の症例もKounis症候群の一部といえるかもしれない。以下はKounis症候群を誘発するものの一覧である。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26966931

冠攣縮性狭心症を誘発する一般的な誘引としては以下のようなものがある。夜間や早朝に起こりやすい。
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https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352906716300033