前立腺がんの治療中の56歳男性が右大量胸水貯留で紹介となった。症状は軽度の労作時呼吸苦のみであった。胸水穿刺を行うと黒色胸水を認めた。検査では滲出性胸水であった。アミラーゼの上昇も認められた。
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https://www.thelancet.com/article/S0140-6736(14)62003-1/fulltext

診断は?





















「肺腺癌による黒色胸水」

・気管支鏡では異常なく、胸腔鏡では胸膜の肥厚を認めた。胸水の細胞診で腫瘍細胞を認め、免疫組織染色で肺腺癌と証明された。胸膜生検でも同様の診断であった。

・黒色胸水は大きく4つの原因に分かれる

1. 感染:Aspergillus niger・Rhizopus oryzae感染
2. メラノーマの転移
3. 出血、溶血:非小細胞肺がんもしくは膵仮性嚢胞(膵胸腔の瘻孔の関与)の破裂
4. その他(活性炭治療後に食道破裂、クラック・コカイン使用など)


・本ケースの黒色胸水の原因は胸腔への出血が長時間立ち溶血しヘモジデリン貪食マクロファージが存在することによると考えられる。胸水アミラーゼの上昇は肺癌とくに腺癌の際に認められる。

・膵仮性嚢胞の破裂の場合、膵液が胸腔内に流れ込むため腹痛を訴えるのは20%のみである。下の写真は膵仮性嚢胞の破裂による黒色胸水であるが、アミラーゼ高値(5292IU/L)、Bil高値(7.3mg, direct 6.5mg)であった。
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https://www.amjmed.com/article/S0002-9343(13)00008-9/abstract

・メラノーマの肺転移はcommonで16%に認められるが、胸水は2%のみである。下の写真はメラノーマの肺転移による黒色胸水。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2871222/