47歳男性が右上下肢麻痺と構音障害で受診した。症状は2週間前に突然発症し、診察では運動性失語と両上下肢に痙性と右上下肢の筋力低下を認めた。小脳症状や脳神経症状は認めなかった。彼は4年前にも左上下肢麻痺を起こし、脱髄疾患としてステロイド治療され1ヶ月で改善したという既往がある。また1年前に胸痛からカテーテル検査を受け、LADとRCAに狭窄を認めステント治療されている。頭痛持ちではなく、彼の兄弟も40代で脳梗塞歴がある

頭部MRIではDWIで左放線冠に高信号とFLAIRで両前側頭葉に白質高信号域を認めた。
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https://academic.oup.com/qjmed/article/113/2/118/5581418

診断は?





















「CADASIL」

・家族歴のある若年の脳梗塞や冠動脈疾患から鑑別はCADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)、血管炎やFabry病、凝固異常を考えた(年齢が高齢ならCAAやBindwanger病も)。MRI所見からCADASILが疑われた。皮膚生検では顆粒状沈着はなかった。遺伝子検査でNOTCH3遺伝子に異常を認め、CADASILと診断した。

・CADASILは「NOTCH3遺伝子異常による常染色体優性遺伝の非アテローム硬化性の血管障害」である。NOTCH3は血管平滑筋に発現しており、変異すると小血管や毛細血管(特に脳)に障害を起こす。毛細血管、動脈を電子顕微鏡で観察すると、血管基底板に顆粒状物質 (granular osmiophilic material: GOM)が観察されるが、常に見られるわけではない。脳以外の血管障害は稀であるが、オランダのCADASIL 41名の研究では21名に冠動脈疾患が見られ、平均年齢は39.6±5.22歳であった。

・MRIでは白質病変を両側頭葉極外包(external capsule)、脳室周囲に認めるのが特徴であるが、AsiaのCADASILでは側頭葉極病変を認めないこともある。あとは微小出血ラクナ梗塞像

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25725137

典型的な病歴は
① 20-40代で片頭痛歴あり(気分障害も)
② リスクがないのに40代でTIAやラクナ梗塞を繰り返す
③ 60歳すぎると認知症が目立つ
④ 家族歴あり

側頭葉極の白質病変の鑑別は以下の記事参考です。