ややこしい分野なので少し整理しておきます。

甲状腺機能亢進ではTRAb(TSHレセプター抗体 第2世代)がまずあります。TRAbには刺激型(TSAb:TSH刺激レセプター抗体)阻害型(TSBAb:thyroid stimulation blocking antibody)があります。甲状腺機能低下では抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)がありますね。この辺を整理していきたいと思います。

TRAbの中でのTSAbとTSBAbの割合は9:1とされ、GDの患者での検出率はTSAbが73-100%、TSBAbが25-75%とされます。阻害型が優位になればGDでも甲状腺機能が低下する場合があります。保険上はTRAb及びTSAbの測定を同時に行った場合は、いずれか一方のみ算定されます。よって甲状腺機能亢進症ではまずTSH、FT4、FT3(10%ではFT3のみ高値)を測り、その評価でTRAbを測ればいいと思います。鑑別はGD、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎などですね。

TSAbは甲状腺眼症(Graves’ orbitopathy:GO)との関連が強いと言われています。

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https://academic.oup.com/jcem/article/95/5/2123/2596702

抗Tg抗体は正常人でも10-15%に見られます。抗TPO抗体はより甲状腺疾患に見られるようです。下の表に見られるように橋本病に特異的というわけではなく、GDや他の自己免疫疾患(RAやType 1 DM)にも見られます。

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甲状腺機能低下を疑う場合は、まずTSHとFT4を測定し、TSHが上昇している場合は原発性になるので橋本病を考えて抗TPO抗体や抗Tg抗体を測定すると思いますが、GDでも陽性になるのには注意です。TSHは10以下くらいでは薬剤やlow T3 syndrome(重症疾患罹患)の可能性も考えましょう。