45歳女性が進行性の倦怠感と呼吸困難感で受診した。心臓超音波検査ではEF25-30%、心房拡張と右室の機能不全を認め、BNPは上昇していた。心臓MRIやストレステスト、冠動脈カテーテル検査、PETでは特異的な所見はなかった。甲状腺機能も異常なかった。β-blockerやスピロノラクトン、ARBなどが開始されたが、心機能は改善しなかった。心電図は以下の通り(Aは初診時、Bは治療後)。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32119584

診断は?













「Double fire tachycardia」

・心電図Aを見ると絶対不整の上室性頻脈である。そしてよく見るとregularのP波(69回/分)を認める。そしてnarrow QRSがP波に引き続いてあるが、PR間隔はshortとlongがあり、shortの際はQRSを2つ認める
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心電図Bでは2段脈の2つ目のQRSは右脚ブロック様の変化をいている。こちらでもPR間隔は190, 389msecの2つのパターンを認める。
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これらからDouble Fire tachycardiaにWenckebach現象(PRが伸びQRSが脱落する)が合併したものと考えた。それにより心電図Aでは絶対不整でAfのように見えた。心電図Bの変行伝導は1つ目のQRSの後に右脚を通るのが遅くなっている影響だろう。電気生理学的検査で心房-ヒス束に2つルートが有ることが証明され、アブレーションでslow pathwayへの治療が行われた。3ヶ月後にEFは50%程度まで回復した。

Double fire tachycardiaDual atrioventricular nodal non-re-entrant tachycardia(DAVNNT)とも呼ばれ、 心房細動や心房性期外収縮、VTなどのmimicとなる。1つの洞房結節活動に対してSlowとFastの房室結節路を通って二重順行伝導を起こし、1つのP波に対して2つのnarrow QRSを認めるのが特徴である。間欠的に起こることもある。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25888570

というわけでP波を正しく同定するのは大事ですね。ディバイダーで距離測って。今回のようにtachycardia-induced myopathyは拡張型心筋症様のエコー所見を取るので注意です。鑑別は以下の記事参照。