神経サルコイドーシスの既往のある45歳女性が受診4週間前よりサルコイドーシスに対して内服していたプレドニンとアザチオプリンを中止し(理由は記載なし)、2週間前より混乱、嘔気、食思不振、幻視神経サルコイドーシスは前医で意識障害で診断された。内服中止による二次性副腎不全と診断され、ストレス下のステロイド量(ヒドロコルチゾン100mg8時間おき)が開始され、症状は改善した。

ステロイド治療から数日後、彼女は著名な口渇と多尿(4-6L/day)、夜間頻尿を訴え始めた。治療5日後には採血でNa 158mEq/Lと高ナトリウム血症を認めた。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25612752

診断は?





















「仮面尿崩症」

・水分を自由に飲める状況にもかかわらず高ナトリウム血症だったことで尿崩症が疑われ、尿Osmoralityを測定すると95mOsm/Lと低値だった。Day5にデスモプレシン点鼻が開始され、尿Osmoralityは上昇し口渇、多尿も改善した。神経サルコイドーシスが中枢性尿崩症をきたしていたところに二次性副腎不全が併発し、仮面尿崩症をきたしていたと考えた。数週間はデスモプレシンは継続されたが、低ナトリウム血症を起こし中止された。

仮面尿崩症とは「副腎不全を合併すると尿崩症の症状がマスクされ、ステロイド補充をすることで症状が顕在化する状態」である。今回のような二次性副腎不全を合併する以外には、中枢性下垂体機能不全と尿崩症の合併がある。仮面尿崩症の原因疾患としてはempty sella、リンパ球性下垂体炎、中隔視神経形成異常症、神経サルコイドーシスなどがある。機序としてはステロイド不足が自由水のクリアランスを阻害することにより、これにはADH-dependent(V2レセプターもしくはレセプターより前の段階でADHのシグナルを阻害)とindependentなものがあると言われている。

・サルコイドーシスの神経関与は5-15%に見られ、罹患部位としてはくも膜/軟膜、脳神経、視床下部-下垂体などがある。視床下部-下垂体系のサルコイドーシス24例では性腺機能低下症 87.5%、尿崩症 58%、TSH deficiency 56%、高プロラクチン血症 55%、二次性副腎不全 37%、GH deficiency 30%であった。他には球麻痺、髄膜疾患、実質内病変、痙攣、意識障害などを起こす。

https://academic.oup.com/qjmed/article/105/10/981/1527143