27歳女性が1ヶ月続く吃逆、嘔気嘔吐を主訴に外来を受診した。13kgの体重減少と頭痛も認めていた。腹部所見や神経学的所見に異常はなく、内視鏡検査・髄液検査・頭部腹部CT検査に異常を認めなかった。頭部MRI検査のFLAIRは以下の通り。
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31242437/

診断は?





















「NMOSDによる最後野症候群」

・頭部MRI FLAIRでは延髄の最後野に高信号を認めた。脊髄と視神経には異常を認めなかった。抗AQP4抗体が陽性でありNMOSD(neuromyelitis optica spectrum disorders)と診断した。ステロイドとアザチオプリンで治療を開始し、嘔気嘔吐の改善には血漿交換とリツキシマブによる治療を要した。

・NMOSDは中枢神経系の炎症性自己免疫性脱髄疾患の一群であり、主に抗AQP4(アクアポリン4)抗体と関連する(陰性例もあり)。AQP4は脊髄灰白質、中脳水道周囲、脳室周囲、血液脳関門のアストロサイトの足突起に認められる水輸送タンパクチャネルである。最後野(Area postrema)はAQ4が豊富に存在するためNMOSDの標的となりやすく、吃逆の経路に介在する化学物質感受性ニューロンや嘔吐を誘発する受容体(chemoreceptor trigger zone;CTZ)があるため、障害されると症状として吃逆や嘔気嘔吐をきたす。最後野症候群はNMOSDのCore clinical characteristicsの1つで単独で7.1-10.3%で初期症状となりえ、難治性吃逆・嘔気嘔吐の鑑別にNMOSDを入れ早期に検査・治療を行うことは重要である

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30258024/

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4515040/

・難治性吃逆の鑑別には以下のようなものがある。
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26307025/