日本プライマリ・ケア連合学会 学術集会の熱冷めやらぬ中書いてみます。今回は病院総合医が話題に上がることも多かった気がします(自分がそれを意識的に見ているだけかも)。

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総合診療医になるのには総合診療プログラムがよくて、内科をローテするだけじゃ総合診療医はできないのは事実かなと思います。でも内科プログラムに入ってなお総合診療医を意識している人も多くて、そういう人に内科ローテイトをどう意味づけてもらうか?

何をかくそう私は後期研修で内科ローテイターをしていました。所属していた天理よろづ相談所病院には昔から内科ローテイト制度があったのです。初期研修のときに内科ローテイトをしていた先輩に憧れたこともあり、後期研修で内科ローテイトコースを選びました。天理の内科ローテイトは総合内科に所属しながら、各科をローテするというものです。その時の経験を元に自分にとって内科ローテイトがどんな意味を持っていたか振り返ろうと思います。

天理の内科ローテイトコースはtaskとして以下のようなものがありました。

① 自分の専門科ローテイト
② 週1回の総合内科外来
③ 初期研修医と2人1組で総合内科入院患者を担当
④ 週1回の総合内科カンファ
⑤ 初期研修医向けの朝カンファ出席


その他に救急当直や科としての時間外当番(入院があると呼ばれる、総合内科とローテ科どちらも)がありました。ご覧の通り結構ハードです。taskが通常の1.5倍くらいになります。ただ今はローテイターの数も増えて、専門科ローテ中は総合内科の担当や時間外当番の数は減らしているはずです。

自分が内科ローテイトで回ったのは以下の通りです。

1年目:神経内科4ヶ月ー放射線科 4ヶ月ー呼吸器内科4ヶ月
2年目:呼吸器内科2ヶ月ー内分泌内科2ヶ月ー循環器内科4ヶ月ー総合内科 4ヶ月
3年目:消化器内科4ヶ月ー腎透析科2ヶ月ー血液内科4ヶ月ー療養型/在宅2ヶ月


時間があれば皮膚科や病理も回ってみたかったなあと思います。3年かけて回っていますので、各々の期間はそれなりに長いですがそれでも最長で6ヶ月です。ではこの内科ローテイトでどのようなことが学べたかを振り返ってみます。

<各科の知識>
まず当たり前ですが各科の知識があります。天理は内科ローテイトの歴史が長いので、各科のローテイターの教育体制が整っていました。それはローテイターをお客様扱いしないということです。バックアップはある上で手技や当番にどんどん入れてくれました。ですので初期研修とはまた違う最前線で働きながらの経験というのは大変勉強になりました。もちろん短期間で全てが学べるわけではありません。ですのでその科で何を学びたいのか、最低限何を学ぶべきなのかを自分の中で設定しておく必要があります。もちろん日々医療は進歩していくので学んだ知識は古くなっていきますが、少しでも最前線で働いた経験があるのとないのでいざその疾患に対応しなくてはいけなくなった時の心持ちが違うと思います。

<各科の視点>
こちらが自分的には後々まで生きている学びになります。各科の医師として前線で働くことでその科の医師の視点を疑似体験することができ、価値感を共有できます。それは総合診療医として病院内で各科の先生と働くのにとても役立ちました。この科はこのようなことを重視するのか、この科の働くペースはこうだから今はこっちで対応したほうがいいななど。この経験は院内で横断的に働く総合診療医にとっては重要と考えています。


というわけで内科ローテイトで学ぶことは知識だけではありません。各々の科の先生との出会いもありますし、担当した患者さんから知識以外にも学ぶことは多いでしょう。総合診療の視点って広いようで一方で偏った部分もあるんじゃないかな〜、他の専門科としての視点も見ておくべきじゃないかなと思います。うまく言語化できないけど。

また何を学べるかなんで正直誰にもわかりません。当人にも終わるまでわかりません。「教育から受益する人間は、自分がどのような利益を得ているのかを、教育がある程度進行するまで場合によっては教育課程が終了するまで、言うことができない。」(「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち」より).なので内科ローテイトをする皆さんも色々言われても何が学べるかワクワクしながらやったらいいと思います!


とは言っても自分の経験から内科ローテイトをして総合診療医として成長するにあたって、3年間総合内科に所属して総合内科としての教育を常に同時に受け続けたというのは大きいと思います。1本、芯となる教育暴露があるのは重要ですよね。


というわけで内科ローテイトを学びにつなげるには以下のような点が重要ではないでしょうか。

・ローテイトと同時並行での主科の教育の暴露
・各科の受け入れ体制の充実
・各科で最低限何を学ぶべきを意識する

総合診療医じゃなく他科の専門医になるにしても、内科ローテイトをどう学びにつなげるのかというのは重要ですよね。専門医制度も変わり、時がたつにつれて内科ローテイト制度が色んな病院で成熟していくといいなと思います。