以前話しには聞いていたNaegleria fowleriが先週のNEJMのpictureに出ていたので調べてみました。

NEJMのpictureは44歳男性が前日からの意識障害で受診し、髄液検査でAのような髄液を認めました。検査結果は細胞数2083(91% 好中球)、糖 87、タンパク477でした。当初細菌性髄膜炎として抗菌薬治療が行われましたが、意識状態は改善せずライトギムザ染色でBのようなアメーバに一致する栄養体を認め、PCRでNaegleria fowleriと特定されました。彼は受診の6日前にインドの屋内プールで泳いでいたそうです。アムホテリシン、フルコナゾールなどで治療されましたが5日後に亡くなりました。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm2002528

Naegleria fowleri「“brain-eating” amoeba」として知られ、日本でも佐賀県で1996年に1例報告があります。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/neup.12582

2014年までに世界で260例が報告されており、アメリカ・オーストラリア・パキスタン・チェコ・インドなどがあります。
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https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1440-1681.13192

40種類ほど報告されているNaegleriaの中で唯一髄膜脳炎や脳出血、壊死を起こし、3-7日で95-97%の致死率と言われています。髄膜脳炎は免疫正常の若者に多く、塩素殺菌が不十分なプールや汚染された川などでの水泳やダイビング、温泉、鼻洗浄でのneti potなどの淡水環境から感染します。栄養体期のNaegleria fowleriは鼻から体内に侵入し、篩板を通り脳に入りCNSの破壊を起こします。栄養体期で最も増殖が盛んな温度は35-46℃で、感染も夏に多いようです。

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https://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S1984-29612019000300514

疑わないとなかなか診断でき無さそうですね。うーんインハンドに出てきそうなアメーバやな・・。