同期の勉強会で勉強したCox比例ハザードモデルにおける比例ハザード性についてです。Cox比例ハザードモデルはRCTでの生存時間分析において有効性の要約や交絡調整によく用いられ、効果の指標としてハザード比(Hazard ratio: HR)が用いられます。

ある一時点でのハザード(Hazard)の定義ですが「その期間までにoutcomeを認めていない人が次の期間まで(単位時間当たり)にoutcomeを認める割合」です。そしてハザード比は「治療群とコントロール群の時間的に変化するハザード比を加重平均したもの」です。

そしてCox比例ハザードモデルでハザード比を解釈するには前提に比例ハザード性が求められます。比例ハザード性とは「研究の最初からフォローアップ終了まで常にハザード比が一定であること」です。しかし考えたら当たり前ですが、殆どの研究ではハザード比は一定でありません
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https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763185 

上の図は実線が生存曲線で点線がハザードで、オレンジが治療群で青がコントロール群です。(A)はハザードの差が後半開いていき、後半にアウトカムが集中しています。(B)は生存曲線とハザードが途中でクロスしています(最初は治療群が悪いですが、後半盛り返している)。(C)は生存曲線はクロスしていませんが、治療群で後半アウトカムを認めずハザードがクロスしています。

つまり治療効果が時間と共に変わる場合は比例ハザード性は保たれません。患者の特性によっては、介入に関連したアウトカムの素因(遺伝子など)を持った人は研究の最初の方でアウトカムを認め脱落するため、後半は患者群全体でアウトカムを認めにくくなることもありえます。

これらの理由でほとんどの研究で比例ハザード性は保たれておらず、例えばハザード比が0.7だったとしても、治療群とコントロール群でコンスタントにmortalityが30%低いということにはなりません。ということで解釈に注意しましょう。