EIght-and-a-half syndromeは海外の人らしい上手い言い回しの疾患名ですが、中々どういった疾患か覚えられません。

Eight-and-a-half syndrome「障害側のⅦ番の顔面神経麻痺+one-and-a-half syndrome」を意味します。顔面神経麻痺は末梢神経型になります。橋の背側被蓋(dorsal tegmentum)と傍正中網様体(parapontine reticular formation;PPRF)、内側縦束(the medial longitudinal fasciculus:MLF)に橋の顔面神経核などが巻き込まれるとEight-and-a-half syndromeを起こします。脱髄血管性病変が多いが、腫瘍によることもあります。
スクリーンショット 2019-08-26 15.28.12
(Bocos-Portillo J, Ruiz Ojeda J, Gomez-Beldarrain M, Vazquez-Picon R, Garcia-Monco JC. Eight-and-a-Half Syndrome. JAMA Neurol. 2015 Jul;72(7):830.より引用)


じゃあOne-and-a-half syndromeは何なんだというと「MLF症候群+障害側の外転障害」です。結果として両側の内転障害と障害側の外転障害、反対側の眼の外転時の単眼性眼振をきたします。機序としては外転神経核 or PPRFの障害+MLF症候群」です。例えば病変が右であれば、外転神経核 or PPRFが傷害されることにより右が外転できなくなります。そして右の外転神経核 or PPRFが傷害されているので対側の内転ができなくなります(下のMLF症候群の流れを見てください)。最後に右のMLFがやられていると右目も内転も傷害されてOne and a half syndromeとなります。

J-Hospitalistのスライドで知りましたが、one-and-a-half症候群の急性期には障害と対側の眼球が正視時に外転位になることがあり、paralytic pontine exotropiaと呼ばれるようです。

最後にMLF症候群は「障害側の内転障害、反対側の眼の外転時の単眼性眼振」です。左を向く時は右の前頭葉が司令を出し⇒PPRFを通り⇒左眼の外転神経(Ⅵ)が動き⇒対側のMLFを通り⇒右眼の動眼神経(Ⅲ)が動きます。ややこしいですね。ちなみに垂直眼球運動と輻輳は中脳が司っています。問題部位の特定になるので注目です。

そしてEight-and-a-half syndromeの実際の症例は以下のようなものです。
52歳男性が両眼での複視、右の顔面神経麻痺で受診した。診察では右注視時眼が動かず左注視で右の内転障害を認めた。輻輳や上下方向の注視は可能だった。
スクリーンショット 2019-08-26 14.55.40
頭部MRIでDWI high ADC lowの右傍正中橋被蓋領域の病変を認め、脳梗塞と診断した。
スクリーンショット 2019-08-26 15.18.38
(Nandhagopal R, Krishnamoorthy SG. Neurological picture. Eight-and-a-half syndrome. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2006 Apr;77(4):463.より引用)