今日なに読もう〜病院総合医の論文日記〜

京都の上さまの元で病院総合医をやっています。バランスの取れた一流の病院総合医目指して修行中!論文メインに挙げていきます。

感染症

HIV急性感染を診断するには?

HIV急性感染は急性レトロウイルス症候群(acute retroviral syndrome:以下ARS)といい、感染より潜伏期間2-4週間で発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹、筋痛、関節痛などで発症し、2-4週間継続するのが特徴でHIV患者の約5-9割で発症すると言われています。

ARSは伝染性単核球症様の症状をきたし感冒Mimickerとなりえます。では症状でARSは疑えるのでしょうか?各症状の尤度比は以下のとおりです。

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https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/1887766

各症状の陰性尤度比はどれも1前後で否定には使いにくいことがわかります。また嘔吐、下痢などの消化器症状も来すんですね。陰部潰瘍、鵞口瘡は比較的特異的です。

というわけでなかなか難しいですが、私がARSを疑うタイミングは以下のとおりです。
 
伝染性単核球症様症状でEBVもCMVも陰性
症状が長期間(2-4週)続く
リスクがある患者(これについては無いからといって否定はできない):MSM(Men who have sex with men)、静注薬物使用者、性風俗産業の従事者、不特定多数との性交渉歴
陰部潰瘍、鵞口瘡を認める
過去にHIVに関連する既往歴がある:ウイルス性肝炎、梅毒、帯状疱疹、繰り返すヘルペス感染症、肛門周囲膿瘍、口腔食道カンジダ etc

周囲への感染やAIDSの発症予防にARSの時点で診断するのは大切ですね。 

GNR菌血症でいつ内服に変更するか?

尿路感染と思われるGNR菌血症の抗菌薬治療を入院中は点滴で行いますという報告に内服に変えたら?という提案をした時に引用した論文。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30667477

腸内細菌群の菌血症患者でOral-step down therapycontinued parenteral therapyを比較した 1:1 propensity score–matched cohort. 腸内細菌にはCitrobacter species, Enterobacter species, Escherichia coli, Klebsiella species, Proteus mirabilis, Serratia marcescens.が含まれます。

Eligibility criteriaには
・感染源がコントロールされている
・治療開始5日以内に良好な反応が得られている
・感受性が良好な内服抗菌薬がある
・食事や内服が可能
・Day5でPitt bacteremia scoreが1点以下(このScoreは体温、意識などで0-14点での評価)

Oral-step down therapy群は治療5日目に内服に変更されます。一方continued parenteral therapy群では治療完遂まで点滴で抗菌薬が投与されます。
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Outcomeは30日以内のMortality30日以内の同一菌種の菌血症再発入院期間です。

結果として4697名を調査し、2161名が組み込まれ、Propensity score matchingにより1478名(両群 739名)を比較した。項目は以下の通り。
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菌血症の感染源は尿路が40.2%、消化管が20.1%、中心静脈カテーテルが18.4%、呼吸器が3.9%、皮膚軟部組織が2.8%であった。Oral-step down therapy群は中央値3日、continued parenteral therapy群は中央値14日点滴治療を行われていた。

30日Mortalityは13.1% vs 13.4%(HR, 1.03; 95% CI, 0.82-1.30)、30日再発は0.8% vs 0.5%(HR, 0.82; 95% CI, 0.33-2.01)であった。入院期間は5日 vs 7日であった。

というわけで早期に内服スイッチしても死亡率や再発率に差はありませんでしたが、使われている内服薬はキノロン系が多いので注意は必要です。
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こういう内服スイッチや治療期間系は結構キノロン系が使われることが多いので、少し実臨床と離れてしまいますね。 

敗血症性ショックの原因の頻度は

「発熱についての臨床推論」というかなり幅広いお題で原稿を書いています。これまとまるのか・・。そこで引用した論文。敗血症性ショックの定義は古いものですので注意。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19696123

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これらから発熱の原因として感染症を疑った場合、まず重症化しやすい呼吸器、尿路、腹腔内、皮膚を重点的に疑って問診、診察しましょう。

感覚的にもまず肺炎、尿路感染、胆嚢炎、胆管炎、蜂窩織炎ですよね。 

両側視床病変の鑑別は?

先日のNEJMのケースはSLEの既往のある29歳女性の頭痛、意識障害でした。SLEの治療はリツキシマブ、ステロイド、MMFなどをされていました。

頭部MRIを撮影するとFLAIRで両側視床に高信号が見られて診断は?というケースでした。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMimc1807627

では両側視床病変の鑑別は何でしょうか?調べてみました。

・感染症:ウエストナイル熱、日本脳炎、狂犬病、CJD
・Top of Basilar syndrome
・静脈洞血栓症:ガレン静脈
・PRES
・Glioma
・Wernike脳症
・浸透圧性脱髄症候群(ODS)
・Fabry病:α-ガラクトシダーゼ活性の欠損または低下
・Fahr病:両側の淡蒼球、被殻、視床などに石灰化が起こる。
・Wilson病
・Leigh病

https://www.ajronline.org/doi/abs/10.2214/AJR.08.1585

というわけで上記のケースの診断はウエストナイル熱でした。画像はある程度パターン認識も大事ですね。

42歳女性 発熱、手足の暗赤色の皮疹/腫脹

42歳女性が39℃の発熱、筋痛、手首と足首に暗赤色の皮疹・腫脹で救急外来を受診した。薬剤暴露はなし。

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https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)60554-0/fulltext

炎症反応、肝逸脱酵素が上昇し、当初は血管性浮腫と考えられ抗ヒスタミン薬で治療されたが改善しなかった。診断は??





















Papular-purpuric gloves and socks syndrome
・紫斑と紅斑性丘疹、小胞と口腔内、性器に紅斑を認めたことから、パルボウイルスB19の抗体価を測ったところIgMの上昇を認め、パルボウイルスB19感染に伴うPapular-purpuric gloves and socks syndromeと診断した。
・発熱と皮疹は2週間ほどで徐々に改善した。

・Papular-purpuric gloves and socks syndromeは手足に痒みを伴う浮腫と点状出血、丘疹、紅斑を認める疾患であり、50%ほどで同様の症状を口や性器周囲、他の皮膚に認める。
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・報告されているケースでは66%でパルボウイルスB19感染を認めた。他のウイルスではVZV、EBV、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス6/7、コクサッキーウイルス、HBV、風疹などが報告されている。ST合剤の副作用でも同様の症状が認められることもある。 
プロフィール

nagano1123

関西で一流の病院総合医目指して修行中

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