今日なに読もう〜病院総合医の論文ブログ〜

京都の上さまの元で病院総合医をやっています。バランスの取れた一流の病院総合医目指して修行中!論文メインに挙げていきます。

血液

MDSと免疫症状

先日の朝カンファは京都GIMの復習でした。8 trisomyに関連したBechet様症状の症例でしたが、MDSは色々免疫的な症状を合併しますね。MDS全体の10-20%に見られるといわれています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27043672

免疫症状(AutoImmune Manifestions:AIMs)を合併したMDS 67例を合併のない134名のAge and sex matched MDS患者と比較した論文。MDS with AIMsの平均年齢は54.5±17.1歳. 平均フォローアップ期間は40.7±45.5ヶ月. 

Neutrophilic Dermatosis (Sweet病や壊疽性膿皮症)が最も多く36%であり、Bechet病が15%、RAが13%であった。
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5q-はNDと関連し、trisomy 8はBechet病と関連した。BDありのMDS患者の62.5%でTrisomy 8が陽性であったが、MDS without AIMsでは19.1%であった。 

別の41例のtrisomy 8 MDSのBechet病のreviewでは眼症状は少なく(7.3%)、消化器潰瘍が多かった(70.7%)ようです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24247154
 

ヘパリン抵抗性の鑑別は?

ヘパリン抵抗性の鑑別は何でしょうか?

ヘパリン抵抗性は35000 IU/day以上投与してもAPTT延長の反応が得られなかった際に考慮します。ヘパリンはATⅢ(アンチトロンビンⅢ)を1000倍に活性化し、第Ⅹa因子とトロンビン(第Ⅱa因子)を阻害し抗凝固作用を発揮します。ちなみにATはⅢ以外がもうないため、Ⅲを付ける必要はもうないようです。

ヘパリン抵抗性の原因としては
① ATⅢの減少:最も多い
② ヘパリン結合蛋白の増加
③ ヘパリンクリアランスの増加:肝疾患の脾腫など
④ 第Ⅷ因子増加;ヘパリンは効果があるが、APTTが伸びない

重要なのはやはり①でしょうか。①は先天性と二次性のATⅢ欠損に分かれます。二次性の原因は以下の通りです

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5998275/

先天性ATⅢ欠損症は日本人では0.18%と推測され、これは欧米(0.02-0.17%)と同等のようです。常染色体優性の遺伝疾患で10代に血栓症を発症する事が多い。

ATⅢ欠損の検査をするタイミングは難しい。
・ワーファリン、直接Ⅹa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)や直接トロンビン阻害薬(アルガトロバン、ダビガトラン)内服中ではアンチトロンビン活性が上昇する。
・ ヘパリンはアンチトロンビン活性を低下させる。 

本来は急性期を過ぎたあとに抗凝固薬を中止して2週間ほどたったあとに測定するのがいいが、なかなかこの疾患を考える場合はそうもいかないですよね。

例外としてUp to dateには以下のような場合が書いてありました。
・AT欠損症の家族歴があり、すぐ診断をつけることで治療が変わってくる場合(緊急手術、急性の血栓塞栓症)
・ヘパリン治療でaPTTが治療域に達せず血栓塞栓が進行し、AT欠損症が判明した場合治療が変更になる(AT補充治療や抗凝固療法変更)場合。
・ALL患者でアスパラギナーゼが使用され、AT欠損症が判明した場合AT補充療法を検討する場合。

検査するタイミングを逃さないようにしたいですね。 

87歳女性 目の周りの色素沈着

87歳女性が眼球周囲と口の周囲にかゆみを伴わない丘疹と色素沈着が徐々に濃くなってきたということで受診した。外傷歴はなく、他に本人に症状はない。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmicm1011176

診断は?





















「多発性骨髄腫に伴うアミロイドーシス」

・皮膚生検では表皮にヒアリン化された不定形の沈着物を認め、Congo-red染色でアミロイドの存在が証明された。
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・血清、尿免疫電気泳動でmonoclonalなκ鎖を認め、骨髄生検で形質細胞を22%認めたことより多発性骨髄腫と診断した。

・アミロイドーシスはアミロイド沈着による血管壁脆弱性沈着臓器への凝固因子吸着フィブリン形成阻害などのため出血傾向を伴う。そのため軽くこする、咳、鼻をすするで出血し、非外傷性のraccoon eyes signを来すことがある。
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https://www.nzma.org.nz/journal/read-the-journal/all-issues/2010-2019/2013/vol-126-no-1379/cc-prystajecky 

84歳男性 全身の黄色班

84歳男性が2年間で徐々に進行する境界明瞭の平坦な黄色〜オレンジ班で受診した。病変は腕から始まり背中に広がっていった。それ以外は症状を認めなかった。身体所見上、眼瞼黄色腫はなく家族歴でも脂質異常症を認めなかった。

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http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0365-05962011000700012

診断は?






















「MGUSに伴うDiffuse plane normolipemic xanthomatosis(DPNX)」

・免疫電気泳動でIgG, κのMonoclonalタンパクを認めた。骨髄生検で形質細胞は4%であった。皮膚生検ではHE染色で表皮に細胞質空胞化を伴う組織球とリンパ球などの炎症細胞を認めDPNXと診断した。

・Diffuse plane normolipemic xanthomatosis(DPNX)はびまん性扁平黄色腫でありコレステロールが正常なものである。 DPNXは血液腫瘍(MMMGUS、リンパ増殖性疾患)と関係すると言われている。

・Mタンパクが脂質の代謝に影響を与え、異常タンパク-リポタンパク質複合体(IgG-LDL)が表皮の血管周囲に沈着すると言われている。 このIgG-LDLが組織球、マクロファージに貪食され黄色腫ができる。
・ReviewをみてもIgG typeが8割を占めている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21757618

・DPNXは血液腫瘍に数年先行して出てくることがある。MGUSも1%/yearでMMに進行するため、慎重なフォローが重要である。

蛋白アルブミン乖離についての解釈

血清総蛋白の正常値は6.5-8.0mg/dLで約60%がアルブミン、約20%がγグロブリンです。他はαとかβグロブリンもありますよね。ですので正常ではTP 6.5 Alb 4.5、 γグロブリンは1.3-1.6mg/dLくらいですね。

なので例えばTP 7.6, Alb 2.2のときは蛋白アルブミン乖離しており、γ-グロブリンが上昇していることが予想されるわけです。

次に考えることはそのγグロブリンがPolyclonalかMonoclonalかです。検査としては蛋白分画(serum protein electrophoresis:SPEP)、免疫固定法(Immunofixation electrophoresis; IFE)、血清Free light chainなどがあります。

SPEPはこんなやつです。
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IFEはこんなやつ
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SPEPよりIFEの方が微量なMタンパクを検出できます(SPEPのMタンパクの検出感度: 100mg/dL、IFEの検出感度: 5mg/dL). MMの感度はSPEPのみ82%、SPEP+血清IFE:93%. SPEP+血清IFE+尿 IFE:感度 97%と言われています。

https://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(15)00895-2/abstract

私はMMを強く疑うときはSPEPに加えて血清IFE/尿IFEもしますが、あまり疑わないときはSPEPのみ(簡便で安い)にしています。

ちなみにBense-Jonesタンパク(軽鎖)は尿定性にはほとんど反応しないので、尿定性で(-)でも疑う際には定量(尿Tp/Cr)しましょう。

血清Free light chainは最も微量なMタンパクを検出可能です( κ 0.15mg/dL, λ 0.3mg/L.). κ/λ比(正常比 0.26-1.65)でcheckします。

これらの検査でMタンパクをcheckし、γグロブリンがPolyclonalMonoclonalか判断します。

Monoclonalな場合多発性骨髄腫(MM)やMGUSを考えますが関連疾患として下記のものがあります。
・POEMS症候群
・TEMPI症候群
・Systemic Capillary leak syndrome
・Schnitzler syndrome

Polyclonalな場合慢性炎症が最も多いですが、顕著に認める場合には下記の鑑別があります。
・AITL
・Sjogren症候群、RA
・AIHなどの肝疾患、肝硬変
・Castleman病
・HIV
・IgG4関連疾患

<追記>
また逆にTP 5.3 Alb 4.2のように近づきすぎている場合も異常です(逆乖離と当院では呼んでいます)。γグロブリンの値が低値ということですね。つまり低γグロブリン血症の鑑別になります。

原発性はCVID(Common variable immune deficiency)と選択的IgA欠損症を覚えておきましょう。

二次性は下記のようなものがあります。
・Multiple myeloma(軽鎖型、IgD型、非分泌型など)
・蛋白漏出性胃腸症、ネフローゼ症候群
・Good症候群
・薬剤性(リツキシマブ、ベリムマブ、ステロイド、TKI inhibitor、カルバマゼピン、バルプロ酸)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4259107/
 
MMは軽鎖型、IgD型、非分泌型ではM peakが存在せず、正常グロブリンの産生が抑えられるため、逆乖離が起こります。注意しましょう。
プロフィール

nagano1123

関西で一流の病院総合医目指して修行中

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