今日なに読もう〜病院総合医の論文日記〜

京都の上さまの元で病院総合医をやっています。バランスの取れた一流の病院総合医目指して修行中!論文メインに挙げていきます。

消化器

憩室炎の場所と年齢の関係

憩室炎は欧米に比べてアジア人では右に多いと言われますが、日本人のデータがあったのでグラフにしてみました。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6468190

年齢が上がるほど左半結腸に増えていくのがわかります(1980年代と少し古いデータですが)。

これは憩室自体が年齢が上がるほど左半結腸に増えていくのと関係するものと思われます。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25860671

右半結腸の憩室炎は虫垂炎mimickerとなりうるので注意が必要ですね。

SBPに対する抗菌薬予防投与

ACP日本支部年次総会で知った論文をもう1つ。SBP(Spontaneous bacterial peritonitis)の予防抗菌薬の話です。あまり知りませんでしたがスタンダードはノルフロキサシン400mg/dayの内服のようですね。

肝硬変患者がSBPを起こした場合は1年生存率が30-50%、2年生存率が25-30%とSBPは重要な合併症の1つです。ノルフロキサシン内服とPlaceboの再発予防のRCTでは1年間のフォローで再発率は20% vs 68%と有効性が示されています。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29946179 

今回はシプロフロキサシン750mg/weekがノルフロキサシン400mg/dayを比較した非劣勢試験です。非劣勢マージンは15%. 

患者は腹水のある20-75歳の肝硬変患者で以下の条件を満たす患者144名を1年間フォロー。49%がChild pugh C. 
・腹水中の多核球数<250/mm3
・腹水中タンパク≦1.5g/dL or SBPの既往
・HCCや2度以上の肝性脳症がある場合は除外

Primary endpointは1年間でのSBPの発症率。SBPは二次性腹膜炎を除外し、腹水中の多核球数≧250/mm3+腹水培養陽性と定義。

結果としては 1年間のSBP予防率はノルフロキサシン群 92.7% vs シプロフロキサシン群 96.3%(P = 0.712, 95% CIs for the difference, −7.1 to 11.2%)で非劣勢が示されました。このP値の解釈ができずに困っています。。非劣勢試験は差があることを帰無仮説にしていると思うのですが、95%信頼区間との兼ね合いが理解できていません。

(追記)
このP値は非劣勢におけるP値ではなく、優越性におけるP値ではないかとご教授いただきました。ですので解釈には95%信頼区間を見るだけで良さそうです。

というわけでシプロフロキサシン週1回の方がコンプライアンスの面でいいかもしれませんね。一次予防では肝移植待機時、二次予防は前例使用が推奨されていました。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)60121-5/fulltext

小腸出血にミソプロストールは有効か?

ACP日本支部年次総会に参加しております。今日1日の参加でしたが、沢山の方々とお話でき楽しい時間を過ごせました。

毎年「厳選論文20選」というコーナーを楽しみにしており、今年も資料を読みました。日々のJust in case learningや職場での教育のおかげか知っている論文も増えてきましたが、その中で勉強になったものを紹介します。

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(18)34698-5/fulltext

アスピリン内服中(<160mg)の小腸出血患者84名(アスピリン継続が必要)をミソプロストール(サイトテック®)200ug 1日4回8週間とPlaceboに割り付けたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial. 

小腸出血は黒色便・下血 or Hb 2以上低下を認め上下部内視鏡で正常、カプセル内視鏡で 潰瘍か4つ以上のびらんが見られているものとしている。NSAIDsやステロイド使用は除外。Primary endpointは8週後のカプセル内視鏡での潰瘍の治癒. 

結果として8週後の潰瘍の治癒はミソプロストール群で28.6%、Placebo群で9.5%であった。NNTは5.3

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潰瘍の数もミソプロストール群で 6.5個→2個、Placebo群で7個→4個とミソプロストール群で有意に減少した。
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副作用は以下の通り。下痢や腹部膨満は多そうですね。

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というわけでサイトテック®も選択肢に入りそうですね。

挿管時のPPIはいつまで続ける?

挿管での人工呼吸器管理は上部消化管出血のリスクと言われており、PPIを投与する事が多いですが経腸栄養を開始したらPPIいらないのでは?という話。経腸栄養は心拍出量を増やすことなく、消化管へのBlood flowを増やしストレス潰瘍予防になるのでは?と言われています。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28865339

ICUで人工呼吸器管理をしている102名をpantoplazole+早期経腸栄養(55名)or Placebo+早期経腸栄養(47名)に割り付けたProspective, double blind, randomized, placebo-controlled, exploratory study.  経腸栄養は人工呼吸器管理24時間以内に開始された(詳しいプロトコルはわかりませんでした)

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Primary OutcomeはOvert or significantな上部消化管出血の発生。Overtの定義が経鼻チューブから血性/黒色物が引けるか嘔吐、タール便か血便。Significantの定義はOvertあり24時間でHtが3低下 or Overtなく48時間でHtが6低下。nの計算はなし。

Primary Outcomeは両群で1名ずつ。全体での発生率は1.96%であった。CDIは4名に発生した(PPI群に1名、Placebo群に3名).

というわけでnが計算されていなかったり、優越性試験で差がなかったから同等といえるわけではないなど色々問題はありそうです。が皆さんどうされていますか? 

抗血小板薬使用時にPPIは必要か?

先日のPPI関連で論文をもう1つ。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28622955

TIA、脳梗塞、心筋梗塞の初回治療で抗血小板薬を内服していた3166名の前向きコホート研究。抗凝固薬内服している患者は除外。TIA、脳梗塞に対してはアスピリン75mg+ジピリダモール400mg分2で長期的に治療され、急性期で再発リスクが高い(ABCD2 score≧4)と判断されれば、初期治療はバイアスピリン75mg+クロピドグレル75mgで30日間は治療された。心筋梗塞では6-12ヶ月はDAPTで治療。PPIはルーティーンには処方されなかった。

13509 person-yearのフォローの間に、405のbleeding event(187がmajor bleeding)が生じ162が上部消化管関連であった。Major bleedingの定義は後遺症が残る、視力障害の残る脳出血、2単位以上の輸血を必要とするもの。消化管保護(PPIやH2-blocker)はフォロー1ヶ月後で32%、1年後で33%でされていた。

非Major-bleedingは年齢と関係しなかったが、Major bleedingは70歳を超えるとriskは上昇し、85歳以上では年間4.1%になった。これはDAPT患者を除いても同様であった。
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上部消化管のMajor bleedingのriskについて多変量解析の結果、年齢(10歳毎) HR 1.97、喫煙 HR 2.39、慢性肝疾患 HR 3.77、腎不全(eGFR 30以下)HR 7.30、潰瘍の既往 HR 1.79であった。
 
PPIが上部消化管出血を74%減少させるという以前のmeta-analysisのデータを適応すると、5年フォローでMajorな上部消化管出血をPPI使用で防ぐには65歳以下 NNT=80、65-74歳 NNT=75、75-84歳 NNT=23、85歳以上ではNNT=20となり、75歳以上でNNTは低下した。

というわけで年齢があがるほどPPIの予防効果は上がりそうですね。これらのRisk factorを念頭にPPIの適応を考えましょう。 
プロフィール

nagano1123

関西で一流の病院総合医目指して修行中

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