今日なに読もう〜病院総合医の論文ブログ〜

京都の上さまの元で病院総合医をやっています。バランスの取れた一流の病院総合医目指して修行中!論文メインに挙げていきます。

消化器

胃切除後の患者でするべき注意とは?

胃切除後の患者では何を気をつけるべきか?というのを勉強してみました。

https://med.virginia.edu/ginutrition/wp-content/uploads/sites/199/2015/11/radiganarticle-June-04.pdf

まず診るのは部分切除(幽門側)なのか全切除なのか、そして再建方法は?
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・早期ダンピング症候群:15-30分後の動悸、めまい、冷や汗、顔面紅潮。胃のリザーバー機能が失われ浸透圧の高い食事が急激に小腸に運ばれることによる。小腸の動きが活性化し全身の血管が広がる。
・晩期ダンピング症候群:2−3時間後の倦怠感、めまい、空腹感、嘔気、発汗。こちらは小腸で吸収が急速に進み一時的な高血糖に対して反応的にインスリンが分泌され、低血糖が起こる。

・脂肪の吸収不良:食事の移動が速くなることにより、消化酵素や胆汁酸との混合が十分でなくなることによる。酵素補充が必要になることも。

・胃での食物うっ滞:手術時の迷走神経切離による。食後の腹部膨満、不快感、通過障害などの症状。胃石やBacterial overgrowthのリスクになる。

・機能的乳糖不耐症:Lactaseは空腸で分泌されるので胃切除後でも分泌には問題ないが、大量に乳糖を消費すると食後に痛みや下痢、腹部膨満を訴えることがある。

・ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏:ビタミンB12の回腸末端部での吸収には胃で分泌される内因子が必要なため、胃切除後ではビタミンB12が欠乏する。胃酸欠乏やBacterial overgrowthも関与する。ビタミンB12欠乏は1年後くらいに起こる。詳しい吸収の機序は以下を参照。葉酸欠乏の原因はよくわからない。
 
 
・鉄欠乏:鉄の吸収は十二指腸なのでB-Ⅰ以外はskipされる。また胃酸が欠乏することにより第二鉄→吸収されやすい鉄形態への変化が阻害される。

・骨粗鬆症 

少し知識が整理できました。 

18歳女性 手の色と温度変化、振戦

18歳女性が3年前からの両手の色調と温度変化、そして時折手が震えることで受診した。同時に右手が勝手に動いてしまうこともあり、集中力も下がっているとのことだった。診察上、右手のジストニアと手足の姿勢時振戦、軽度の構音障害、嚥下障害、運動緩徐を認めた。採血では肝酵素とγ-GTPの上昇を認めた。

眼の所見は以下の通り。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmicm1101534

診断は? 





















「Wilson病」

・セルロプラスミン 0.02g/L(正常値 0.2-0.5)、銅 4.1umol/L(正常値 11-22)と低値であり、24時間尿中銅排泄量は12.8umol/L(正常値 0-1)と上昇していた。眼の所見はWilson病に伴うKayser–Fleischer Ringsであった。ATP7B遺伝子の遺伝子変異を認め、WIlson病と診断した。銅キレート剤の治療で神経症状は改善し、Kayser–Fleischer Ringsも消失した。
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・WIlson病はATP7B遺伝子の変異により、肝細胞での銅の胆汁中への排泄が阻害される常染色体劣性遺伝疾患(浸透率はほぼ100%)である。 その結果、肝臓に銅が沈着し肝硬変に至る(10-20代)。肝臓の貯留限界量を超えると(20-30代)血中に流れ出し、神経/精神症状(振戦、Parkinsonism、抑うつ)やKayser–Fleischer Rings(角膜のデスメ膜への沈着)を来す。
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https://academic.oup.com/qjmed/article/112/8/629/5299788

・急性肝不全のプレゼンテーションを取ることもある。その場合、Coombs-negativeの溶血性貧血と腎障害を伴う。溶血を伴うためBilがかなり高いのが特徴。

・遺伝子変異により銅胆汁排泄、ゴルジNetworkへの輸送に必要なセルロプラスミンの折りたたみができず、半減期が短くなり血中セルロプラスミンの定値を示す。セルロプラスミン低値はWIlson病保因者だけでも見られるため注意。

・肝障害に加えて、若年発症の神経/精神症状の家族歴、進行性肝障害の家族歴、神経/精神障害の既往、UA定値、Fanconi症候群などを認める場合にWIlson病を疑う。 つまり家族歴の聴取が大事。また自己免疫性肝炎と診断され、治療に反応が悪いときはWilson病の可能性を考える。 

・MRIではT2で基底核(レンズ核、尾状核など)や橋、視床、中脳、に高信号を認める事が多い。 
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https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0967586818302108

食道静脈瘤の予測因子は血小板数/脾臓径<1000

S見先生回診で教えてもらいました。肝硬変患者で静脈瘤を予測する因子は血小板数/脾臓径. 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12865282

1st part:145名の肝硬変患者で89名に静脈瘤が認められ、そのうち29名は巨大静脈瘤であった。
肝硬変の原因はC型肝炎78名、アルコール24名、B型肝炎16名、アルコール+B or C 11名、B+C 4名、B+D 2名、自己免疫2名、原因不明6名、PBC1名、Wilson1名. Child A 54名、B 52名、C 39名. 

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145名の代償性肝硬変患者から食道静脈瘤に関係する因子を多変量解析し、血小板数/脾臓の直径(mm)が独立した因子と判明した脾臓の大きさはエコーで最大径(mm)を見ている。

ROC曲線から
血小板数/脾臓径<909は感度100%、特異度93%であった。
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2nd part:1st partで作ったcriteriaの再現性を別の肝硬変患者121名で診たところ、陽性的中度 71%、陰性適中度 100%であった。

145名の代償性肝硬変患者でcheckしたところ、
血小板数/脾臓径<909は感度100%、特異度71%であった。代償性肝硬変の定義は腹水や肝性脳症のない患者と定義されている。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12865282 

まあCutoffは1000で覚えておけばいいんじゃないでしょうか。 

65歳男性 左大量胸水

アルコール肝硬変の既往のある65歳男性が呼吸苦で受診した。レントゲンで左胸水を認め、穿刺にて白色の胸水を認めた。
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https://www.heartandlung.org/article/S0147-9563(15)00103-X/abstract

胸水検査では漏出性でありリンパ球優位(TP1.3, LDH 53, コレステロール16)であった。胸水TGは235mg/dLと高値を認めた。腹水も認め、穿刺にて乳び様(TG 180)であった。

診断は?
 




















「肝硬変に伴う漏出性乳び胸腹水」 

・多くの乳び胸は滲出性であり、原因はリンパ腫などによる腫瘍性や外傷性のリンパ管閉塞による。
漏出性の乳び胸は珍しく肝硬変が原因のことが多い。他にはネフローゼ症候群、アミロイドーシス、SVC血栓、心不全などがある。
・肝硬変による乳び胸は乳び腹水が横隔膜の欠損を通じて胸腔内に移動するとされている。乳び腹水は門脈圧亢進によりリンパ管圧が上昇し、最終的には拡張したリンパ管が破裂することによるとされている。

・肝硬変に伴う胸水は右が85%を占める。腹水を認めない場合もある。テクネシウムシンチで診断がつく。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10492320 

GAVE(Gastric antral vascular ectasia)について

GAVE(Gastric antral vascular ectasia)について勉強。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23330048

GAVEは胃前庭部毛細血管拡張症. 非静脈瘤性上部消化管出血の4%を占めると言われている。胃前庭部にスイカの皮の縞模様に似た発赤を認める。
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前庭部にびまん性の発赤を示す(Honeycomb stomach)とDAVE(Diffuse antral vascular ectasia)と呼ばれることもある。

病理学的には粘膜毛細血管の拡張、局所的な血栓、紡錘細胞の増殖、細動脈硬化を認める。強い蠕動運動による機械的ストレスが血管の閉塞と拡張を起こすのでは?と言われている。ガストリンやVIP(vasoactive inhibitory peptide)も関係するかも。

PHG(portal hypertensive gastropathy:門脈圧亢進性胃症)はよく似た臨床像を呈するが胃底部胃体部に多い。実際、門脈圧亢進はGAVEに関係ないとされている(β-blockerは有効でない)。
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GAVEを見つけた場合は背景疾患があることがある。多いのはRaynaud phenomenon, Sjogren syndrome, 全身性強皮症や肝硬変など。肝硬変だとDAVEのパターンを取る事が多い。 
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プロフィール

nagano1123

関西で一流の病院総合医目指して修行中

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