今日なに読もう〜病院総合医の論文ブログ〜

京都の上さまの元で病院総合医をやっています。バランスの取れた一流の病院総合医目指して修行中!論文メインに挙げていきます。

神経

サーフィン後の下肢脱力

特に既往のない23歳女性がはじめてサーフィンをした。1時間ほど海の中にいたが、サーフボードの上で立ち上がりにくい事に気づいた。ボーイフレンドに抱えられて海から戻ったが、更に下肢の脱力としびれが進行した。同時に彼女は軽い背部痛も感じていた。

診察でTh11-12以下の感覚低下と下肢の筋力低下、下肢の反射低下、肛門括約筋のトーヌスの低下を認めた。MRIではTh8以下にT2で高信号を認めた。
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https://www.amjmed.com/article/S0002-9343(19)30326-2/abstract

診断は?





















「Surfer’s Myelopathy」

・彼女は海の中に行く前にサーフボードの上に乗る練習をし、サーフボードの上で首と背中を伸ばす運動を繰り返していた。Surfer’s Myelopathyと診断し、ステロイドの点滴を行われ症状は徐々に改善し1ヶ月後に退院した。1年後も下肢の筋力低下と痙縮は残っていた。

・Surfer’s Myelopathyは初めてサーフィンを行った未経験者に多い軽度の背部痛と急性発症の麻痺と異常感覚、膀胱直腸障害を認める疾患である。脊髄MRIではT2の高信号(Th5-10に多い)、DWIの高信号などを認める。背中の過伸展により貫通血管の剥離が起こり、それが脊髄の前方/後方循環の分水嶺で胸髄梗塞を起こすと考えられている。立ち上がる際のバルサルバ手技での髄腔内圧の上昇Adamkiewicz動脈の圧排/攣縮やIVCの圧排により静脈ドレナージに問題が起こるなども原因となりうる。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30767718

体操、ヨガ、チアリーディング、アクロバティック、バレエ、ピラティス、ゴルフなどでも起こりうる。

・治療はステロイドの点滴、髄液穿刺により圧を下げる、血圧を上げることなどがある。

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Three Territory Signについて

多領域にまたがる脳梗塞では心原性や大動脈プラークの関与を考えますが、悪性腫瘍関連も重要な鑑別の1つです。今回は3領域にまたがる脳梗塞は悪性腫瘍関連の可能性が高いのではという論文。先日、うちのチームメンバーに紹介しました。

https://cp.neurology.org/content/9/2/124

悪性腫瘍関連64名、心房細動(Af)を持つ167名の脳梗塞患者の頭部MRI-DWIを調べたa single-center retrospective analysis. 悪性腫瘍もAfも持っている患者は除外。TTSを認めた悪性腫瘍の内訳は肺癌 6名、消化器系 5名、残りは腎癌、Lymphoma、乳癌、子宮頸癌が1名ずつ。

Three territory sign(TTS)とは「両側の前方循環と後方循環でDWI 高信号を認める」と定義されている(下図)。
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結果は以下の通り。TTSを認めるのは悪性腫瘍関連の約1/4を占めた。対してAf関連では3.6%であった。

TTSは悪性腫瘍関連について感度 23.4%、特異度 96.4%であった。
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低髄圧症候群のMRI画像所見

低髄圧症候群は起立時の頭痛、頚部痛、めまいを特徴とし、ルンバール手技後・スポーツ/交通事故などの外傷後・咳嗽、性交、分娩、排便や肉体労働の際のいきみがきっかけとなり、くも膜囊胞やくも膜憩室の破綻、Marfan症候群 などの組織脆弱性、脊椎変性による骨棘形成、椎間板ヘルニアなどの関与も考えてられている疾患です。

身体診察ではQueckenstedt test(頸静脈圧迫で低髄液圧症候群の症状がましになる)があります。

では低髄圧症候群のMRI画像所見はどんな特徴があるでしょうか?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30776059

152名(56名 低髄圧症候群、16名起立性頭痛 without CSF leak、60名コントロール、Validation 20名)で以下の所見についてスコアリングを作成。
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上矢状静脈洞の拡張
硬膜の造影
③ 脳表ヘモジデリン沈着
④ 下垂体の拡大
⑤ 海綿静脈洞が見えやすくなる
⑥ 鞍上槽の狭小化
硬膜下液貯留

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鞍上槽の狭小化(≦4mm)
前橋槽の狭小化(≦5mm)
乳頭-橋の距離の減少(≦6.5mm)
⑪ 小脳扁桃の下方化

①②⑧を2点、⑦⑨⑩を1点とし、5点以上は低髄圧症候群の可能性が高かった
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例えば下の写真では硬膜下液貯留(1)や硬膜造影(2)、静脈洞の拡張(3)がみられます。Sagittalは定量的なのでわかりやすいですね。
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なかなか造影まではしないかもしれませんが、②以外は評価できますね。SaggitalとCoronalのオーダーを忘れずに!

脳炎の患者さんが耳が腫れたら何を考える?

44歳男性が30日前からの関節痛、20日前からの記憶障害で受診した。頭部MRIではT2で左海馬と右脳室周囲、側頭葉に高信号を認めた。

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髄液検査では単核優位の白血球増加と蛋白増加を認めた。ウイルス性脳炎が疑われ、アシクロビルが開始された。入院中に以下の所見が認められた。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22051026

診断は?





















「再発性多発軟骨炎による脳炎」

・MRIでも両側耳介に異常高信号を認めていた。耳介軟骨の生検で炎症細胞の浸潤と軟骨の変性を認めた。再発性多発軟骨炎(Relapsing Polychondritis:RP)による脳炎と診断し、メチルプレドニゾロン200mg5日間点滴し、120mg/dayに減量した。
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・1週間後には症状は改善し、耳介の腫脹も無くなった。その後、PSL60mg+アザチオプリン100mgで退院した。
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・RPは50代に多い様々な軟骨(耳介、鼻、気管、心臓の弁、関節)に炎症を起こし、耳介腫脹・鞍鼻・気道狭窄・弁膜症・関節炎などを起こす疾患である。またプロテオグリカンが豊富に含まれる組織(眼球、心臓、血管、内耳、腎臓)にも炎症を起こす。
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https://www.cfp.ca/content/cfp/64/5/363.full.pdf

これは鞍鼻。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1713302

これは強膜炎をきたしたRP
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1501692

・RPは髄膜脳炎を合併し様々な症状(認知機能障害、意識障害、記憶障害、痙攣、感覚障害など)をきたす。他の症状が見逃されることもあり診断は難しい。頭部MRIで耳介に異常信号を認めることがあるので注意である。脳生検がされることもある。

イーケプラ®の精神障害の副作用

レベチラセタム(イーケプラ®)は使いやすい抗てんかん薬です。

・静注ができ、内服スイッチが容易
・部分にも全般発作にも効く
・速効性もある
・作用機序がSV2aを介したものなので他の
Naチャネルブロッカーの薬(カルバマゼピン、バルプロ酸、ゾニサミド、ラコサミドなど)を足しやすい
・薬剤相互作用が少ない
・妊娠、授乳にも影響が少ない


といい事ずくめです。ただ値段が高い(内服500mg 204.2円、点滴 500mg 2004円)のは難点です。詳しくは下の後輩のブログも参照。当院ではブログがプチブームです。



しかし、そんなレベチラセタムにも注意すべき副作用があります。精神障害(抑うつ気分、精神病、不安、自殺企図、イライラ、癇癪)です。16%程度に見られると言われており中止が必要な場合もあります。そこでてんかん(epilepsy)、認知機能障害(Congnition) 、不安障害(Anxiety)に対してレベチラセタムとPlaceboを比較したdatabase study. 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12697136

てんかんで使用のケースで精神障害は多い。
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多くは1ヶ月以内に起こるが、てんかんでは1ヶ月以降も起こりうる

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ただ中止 or 減量まで必要な例は少なかった。スクリーンショット 2019-11-22 12.30.51

ただ新規のてんかん薬で調べるとLEVが特に多いというわけでもなかった。TPM(トピラマート)では神経過敏、ZNS(ゾニサミド)では敵対/イライラが多い。
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他のmeta-analysisでもイライラや眠気、倦怠感は多い。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26362377

というわけでめちゃくちゃ多いわけでもなさそうですが、注意しましょう。やっぱり使いやすいな。。
プロフィール

nagano1123

関西で一流の病院総合医目指して修行中

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