今日なに読もう〜病院総合医の論文日記〜

京都の上さまの元で病院総合医をやっています。バランスの取れた一流の病院総合医目指して修行中!論文メインに挙げていきます。

神経

失神とてんかんを痙攣の数で見分ける

失神でも痙攣するため、てんかんとの鑑別は見た目では難しいというのは有名な話ですがそれを痙攣の数で鑑別しようという論文。けいれん患者で脈を触れるのは重要ですよね。後、低血糖の除外。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29549227

失神65名(Tilt試験で誘発)とけいれん性てんかん(Convulsive seizure:EEGもcheckされている) 50名のvideoとEEG review. 失神患者のうち、固定肢位(tonic posture)は65%、Myoclonic jerkは51%に見られた。

失神患者では痙攣の数は中央値 2(range 1-19) である一方、てんかんでは中央値48(Range 20-191)であった。
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痙攣の持続時間も3.6秒 vs 29.0秒とてんかんの方が長かった。 

失神でよく見られた肢位は肩が前屈、肘は屈曲。眼球、頭囲は偏位などであった。
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また失神では脱力(Atonia)が全例で見られたが、てんかんでは見られなかった。

以上より論文の筆者は10/20 ruleというものを提唱しています。「けいれんの数が10以下なら失神、20以上ならてんかん」というものです。1つ参考になりそうですね。 

脳動脈瘤はどこをcheckする?

脳動脈瘤は場所を覚えておく。頭痛でCTを取った時にしっかりcheckする。

好発部位はA-Com(前交通動脈) 30%、P-Com 25%、MCA M2 20%、Basilar top 7%となっています。
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra052760

これは日本でもあまり変わらないみたいですね。 
http://connect-clinicians.com/brain-nerve/sah-epidemiology/ 

MRI画像ですが、MCAの動脈瘤の位置はこの当たりです。もう少し遠位に出ることもあります。
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https://www.bmj.com/content/353/bmj.i2413

A-Comはここ。
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http://surgicalneurologyint.com/surgicalint-articles/unruptured-anterior-communicating-artery-aneurysm-presenting-as-depression-a-case-report-and-review-of-literature/

P-Comはここ。
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https://www.radiologytoday.net/archive/rt1018p30.shtml

SAHの2-8週間前に10-40%の患者で現れる警告出血では特に注意して動脈瘤を探しに行きましょう。
 

神経伝導検査について

神経伝導検査について備忘録的にまとめます。久しぶりにこの本を出してきて勉強しました。
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<運動神経伝導検査>
運動神経伝導検査では神経の走行に沿って数箇所で電気刺激を加え、誘発された複合筋活動電位(Compound Muscle Action Potential:CMAPまたはM波)の振幅(Amplitude)と潜時(Latency)を測定する。

刺激より誘発筋電位の起始までの潜時は以下の3成分からなる。
① 刺激部位より神経末端までの伝導時間
② 興奮が神経筋接合部で筋終板に伝達される時間
③ 終板の脱分極に続いて筋細胞膜で活動電位が誘発される 

したがって単純に刺激点から記録電極までの距離を潜時で割っても神経伝導速度を求めることはできない。よって神経伝導速度は神経に沿った2点で刺激を加え、潜時差で2点間の距離を割って計算される。

正常値
・尺骨神経:Amplitude 5mV、伝導速度 50-60m/s、
・正中神経:Amplitude 7mV、伝導速度 50-60m/s
・橈骨神経:AMplitude 10mV、伝導速度 60m/s
・脛骨神経:Amplitude 6mV、伝導速度50m/s

<感覚神経伝導検査>
感覚神経伝導検査では遠位部の指神経に刺激を加えて感覚神経活動電位(Sensory nerve action potential:SNAP)を近位部から導出する順向性記録法と神経幹に近位部で刺激を与え指神経の電位を導出する逆行性記録法がある。

感覚神経の潜時は神経伝導時間そのものなので、1箇所の刺激で伝導速度の計算ができる。

正常値
・正中神経 amplitude 40uV、伝導速度60m/s
・橈骨神経 amplitude 4-10 伝導速度 60m/s

<F波について>
F波とは運動神経伝導検査でCMAPを測定する際に強い刺激を加えると、M波に続いて一定の潜時をおいて計測される小さい電位のことを言う。F波は運動神経繊維が刺激され、その部位から逆行性インパルスにより脊髄前角運動ニューロンの再発火を起こし、順向性インパルスを生じた結果起こる。

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F波では伝導速度、潜時、出現率をcheckする。したがって末梢神経とくに脱髄を起こす疾患(GBS、CIDP、CMT、DM)などで高率に潜時の遅延、F波伝導速度の低下、出現頻度の低下を示す。神経叢や神経根障害では障害が広範囲で無い限り異常が出ることは少ない。通常末梢神経は複数の神経根で支配されているからである。

<軸索および髄鞘の障害>
軸索障害では複合活動電位の振幅が低下し、脱髄では神経伝導の遅延と限局性ブロック(Conduction blcok)が特徴的。

軸索障害も軽度なものでは細い線維が傷害され、複合電位の振幅は正常にとどまり神経伝導速度にも異常はない。太い線維まで傷害されると複合電位の振幅は低下し、それに応じて伝導速度も変化するが正常値下限の70-80%以下になることはない。アルコール、尿毒症、PN、ポルフィリン症、DM、悪性腫瘍など鑑別は多い。

節性脱髄では伝導速度の減少が著しく、正常下限の60-70%に低下する事が多い。局所的な脱髄疾患では神経伝導が障害部位でのみ遅延するが、それより末梢部位では伝導異常を認めない。脱髄疾患ではGBS、CIDP、多巣性運動ニューロパチー、POEMS、CMTなどがある。神経束内の脱髄が細い線維に起こると、個々の神経線維伝導速度が大きくばらつくため、時間的分散が増大し、活動電位の持続が延長する。

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障害で出る神経伝導検査のパターンとしては
① 振幅が低下し、潜時が正常かわずかに遅延する:軸索障害

② 振幅が低下し、潜時が遅延し波形が変化する:脱髄障害。GBSなどでは広範囲の脱髄により、伝導ブロックで時間的分散が異常に増大し、電位の波形にかなり歪みが見られる、

③ 振幅が正常で、潜時が遅延している:節性脱髄

④ 電位が全く誘発できない:高度の軸索変性もしくは刺激部位より下部での完全な伝導ブロック

GBSとA-CIDPをどう見分けるか

GBSは単相性で4週間以内に進行がおさまりますが、CIDPは緩徐進行性でピークが8週以降に見られ再発や階段状の悪化を認めます。

しかしCIDPの中でも16%ではrapidly progressiveで8週以内にピークを迎え、その後慢性経過を辿るもの(Acute onset CIDP: A-CIDP)もいます。そのため、GBSでも3回以上悪化する例や9週以降にピークがある例ではA-CIDPを考えます。

でも2ヶ月も待てないですよね。そのためA-CIDP 15例とGBS 30例を比較して特徴を抽出した論文です。A-CIDPではGBSに比べて感覚障害をきたしやすく自律神経障害・顔面神経麻痺・先行感染・人工呼吸器管理が少ないとされています

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神経伝導速度の結果は以下の通り。神経伝導速度では有意にA-CIDPを示唆するものは無かったが、腓腹神経がスペアされており、他の神経(medianなど)が障害されているパターンはGBSに多かった。
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https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/mus.21480

こっちがメインで読みたかった論文かも・・。

ではGBSの中でも治療後に変動が見られる症例(GBS-TRF;Treatment Related Fluctuation) とA-CIDPにどんな違いがあるかという論文。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20427754

GBS-TRF 14例とA-CIDP 8例を1年間フォローし比較した。運動神経伝導検査は尺骨神経、腓骨神経は行い、正中神経と脛骨神経はオプションで行った。これらの神経でdCMAP、pCMAP、遠位潜時、運動神経伝導速度(mNCV)、F-wave潜時を測定した。感覚神経は正中神経と尺骨神経で行い、腓腹神経はオプションで行った。SNAPと神経伝導速度を測定した。
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GBS-CRFでは治療後の変動は症状開始より中央値 18日(10-54日)で起こっていた。一方A-CIDPでは51日(31-63日)であった。GBS-CRFは5症例で2回 TRFを起こしたが、それ以上に起こす症例はいなかった。 

A-CIDPはGBS-TRFと比べて重症度は低く、人工呼吸器管理を必要とせず(0% vs 44%)、ほとんど脳神経症状の合併(13% vs 69%)を認めなかった

神経伝導検査では以下の通り。
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なんとなくGBSとA-CIDPのイメージが掴めました。 

63歳女性 右足の振戦

63歳女性が3ヶ月で徐々に悪化する両下肢の振戦を主訴に受診した。振戦は右足に強く安静時にはないが、立ったり歩いたりすると悪化した。頭部にも軽度の振戦を認めた。頭痛、しびれ、意識障害、麻痺などは認めなかった。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27816447

彼女は60pack-yearの喫煙歴があった。 診察上も姿勢時振戦を認めたが、それ以外の異常所見は無かった。彼女は本態性振戦と診断され、β-blockerで治療された。しかし1ヶ月立っても改善せず薬をガバペンチンなどに変更されたが改善は見られなかった。頭部MRIでは異常を認めなかった。

半年後に紹介されたときには振戦に加えて、構音障害と垂直性複視も認めていた。振戦は運動で増強し目標に近づくに従って増強した。眼球運動はsaccadicであった。頭部造影MRIが取られたが特記すべき所見は無かった。

診断は? 





















「小細胞癌に伴うParaneoplastic syndrome」

・患者の問題部位としては右小脳が疑われる。「画像で異常がないSubacuteな小脳障害の鑑別」腫瘍随伴、抗GAD抗体関連、toxic、代謝性、遺伝性などがある。

・小脳障害に関連する悪性腫瘍は小細胞癌、神経芽細胞腫、卵巣がん、精巣がん、乳がん、ホジキンリンパ腫、胸腺腫などがある。 

・本症例では腫瘍随伴症候群を疑い、IvIg 2g/dayを開始した。FDG-PETで右肺腫瘍と縦隔・右肺尖部リンパ節腫脹を認めた。
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・ リンパ節生検で小細胞癌が証明され、小細胞癌に伴う腫瘍随伴症候群と診断した。また抗Zic4抗体と抗GAD65抗体が陽性であった。

・腫瘍随伴の神経障害には小脳失調以外に辺縁系脳炎、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、脳幹脳炎、錐体外路症状、脊髄炎、多発神経炎、MG、LES、Stiff-man syndrome、Neuromyotoniaなどある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12849427

小脳に形態異常がないときの小脳失調の鑑別の勉強になりますね。小脳失調を起こす薬剤にはフェニトイン(アレビアチン®)、バルプロ酸、メトロニダゾール、リチウム、アミオダロン、カルバマゼピン、シスプラチンなどがあります。アルコールもですかね。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25391707

振戦についてどう鑑別するかはこちらを参照ください。 企図振戦と動的振戦はきちんと鑑別しなければいけないですね。
 
プロフィール

nagano1123

関西で一流の病院総合医目指して修行中

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